言問通り沿い、善光寺坂下に「石井履物店」があります。昔から看板がなく、昨年頃から明かりも消え、店を閉じられたのか、と思っていました。ここ最近、紙に書かれた、“かわいい看板”が貼られ、目を惹かれました。藝大の近所と言うこともあり、はじめ芸大生の知り合いに頼まれたのかとも思いましたが、近付いてよく見ると、下書きの跡などが見えて拙いけれど丁寧に描かれ、とても優しく暖かな印象を覚えました。そこで、絵を描かれた人物がどうしても知りたくなって、ご店主にお話を聞かせていただきました。

石井さんのご亭主は昨年亡くなられました。酒も煙草もやらない、偏食もしないご亭主は、働き盛りに突然、1型糖尿病を患いました。診断された病院の先生からは、「地道に治療すれば 10年は生きられます。10年間頑張りましょう。」と声をかけられたそうです。ご亭主は昨年(2007年 5月)亡くなられるまで 35年間、インスリンを投与しながら生を全うされました。
ご亭主が亡くなられた翌日、気が抜けてしまったのでしょうか、石井さんは自転車から転倒。大腿部骨折の事故に遭われました。全身麻酔による大手術だったそうで、ご亭主の通夜にも葬式にも出られなかったそうで、一人息子がすべて取り仕切ってくれたことに大変申し訳なかった、と言われました。
石井さんには一人息子がいるそうです。現在、48歳ですから父親が 1型糖尿病を患った時には 15歳くらいでしょうか。父を補い働く母親を見ながら、息子さんは公立高校から公立大学へ進み、奨学金を利用しながらなるべく両親へ負担をかけることなく進学、就職されました。
35年間、ご亭主のお世話と生活で手一杯。息子は手がかからず何でも自らしてくれた。その事が、申し訳ないし、感謝しているんです。と言われます。
その後、息子さんは結婚し、お孫さんが生まれました。息子さん夫婦はともに働いているために、お祖母さんである石井さんが度々、お孫さんの行事に参加されました。お孫さんは両親でなくお婆ちゃんが学校行事に参加されることを嫌がらず、むしろいつも喜んでくれたそうです。
看板の話に戻りますが、かつての看板はずいぶん昔の台風で外れて落ちてしまったそうです。舗道は狭く人通りもあるし、男手もなく費用もかかるので看板はずっと無いままなのだそうです。
今まで、絵が得意で賞をとったり、習ったりしたことは一度もなかったお孫さんが、突然「看板を作ってあげる。」と描かれた絵がこの看板です。石井さん、さぞ嬉しかったことでしょう。
お孫さんは今春、高校受験だそうですので、しばらくこのままですが、いずれこの草履の絵のほかに、あと 2枚。取扱商品である下駄とサンダルの絵を描いてくれたら嬉しいんですけれど…。と、ポツリと言われました。

たった 1枚の絵。その絵の説明に、石井さんが話された家族の歴史をどうしても省略できずに書かせて頂きました。
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石井さんには、ブログへの掲載の許可を得ましたが、ブログについてどれ位理解されているのかわかりません。拙文に何らかの支障がありそうでしたら、修正ないし即刻削除し、お詫びいたします。
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